CS Clip Column

DX推進における課題や事例をコンテンツとしてご紹介します。

失敗しない、ERPベンダー選定 ~中規模化学製造業の場合~

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この記事を読めばわかる!重要な3つのポイント:

  1. 中堅化学製造業での購買、在庫管理のERP導入時は、導入目的の明確化、業務要件・システム要件の整理が必須
  2. ERPベンダー選定時、営業マンたちの話を全て鵜呑みにしないでちゃんとコミュニケーションをとる
  3. 話が正しい、正しくないのかで困ったときは、経験豊富なアドバイザーに頼る

特に以下に当てはまる方は、ぜひこの記事を参考にしてください:

    □ 化学製造業で購買、在庫管理の基幹システムが保守切れのため、刷新を考えている
    □ ERP導入ベンダー選定を行おうとしている
    □ ERPを導入する際に抑えるべきポイントを事前に知っておきたい

中規模の化学製造業で活躍する皆様、社内で「基幹システム」は活用していますか?

本記事では、化学製造業の購買や在庫管理を現場担当であるあなたが、上司や役員の方から「現行の基幹システムが保守切れになるから、その刷新を担当してくれ」という指示を受けたとき、気を付けてほしいことを掲載しています。特に、コンサルティング会社への依頼を会社の事情や予算の都合で依頼できないあなたにこそ、知ってほしい内容です。

導入において、導入目的の明確化、業務・システム要件整理をコンサルティング会社に依頼できない場合、自身で行わざるを得ないですよね。こうした状況でも経験豊富な第3者のサポートは必要ですし、導入においてはERPベンダーにお願いする流れになると思います。

ただし!その前にやっておくべき大事なことがあるので、本記事ではそれをお教えします。

ERPベンダー選定前に漏れていないか確認するべきこと

ステップ1: ERPには「追加開発」が必要なことを理解する

「原料や製品を登録しておけば在庫・製造・発注・販売を紐づけた管理業務が自動化できる」

「手書き帳票や俗人的なオペレーションによる計算ミスやブラックボックス化が防げる」

「これまで単純作業に使っていた社員の時間を、別の活動に充てられる」

こういった複雑な計算処理の自動化(自動処理)や二重入力防止等の業務プロセスの効率化はERPシステム導入の大きなメリットです。

ただし、多くの化学製造業では、既存の製品で十分に対応が出来ないことが多いのです。

というのも、製品化されているシステムは、開発した企業が考える「業務のあるべき良い形(スタンダード)」を提供するように各機能が用意されています。そのため基本的な考え方としては、ERPパッケージシステムに自社業務をあわせていく「Fit to Standard(標準化)」の考え方を軸に導入を検討していくことが効率の良い方法です。

しかしながら、化学製造業においては、特殊な業務プロセス・変えることが難しい業務が存在します(ステップ2にて解説/ジャンプして飛ばすみたいに出来る??良いやりかたで!)。

ERP製品が「標準的な」業務プロセスをサポートする機能を提供している以上、「特殊な」業務や管理手法を扱っている場合は、必ず追加開発のスケジュールと予算を用意しておくべきですし、それをベンダーに依頼する必要があるのです。

追加開発(アドオン開発)とは、ERP/基幹パッケージシステムとして想定された標準機能に対して不足している機能がある場合に、独自機能の実装にかかる作業を意味します。

▼これを無視して進め始めた、とある化学製造業での失敗事例…。

例えば、とある化学企業で導入したシステムではこんな事例もありました。

当初のベンダーと打ち合わせで、正しく業務要件・システム要件を伝えることが出来ていなかったため、正しい見積りではない状態で進んでしまい、進めるにつれて多くの漏れが見つかりました。

一例としては、配合レシピや保管時の形状に特有の認識コード・IDを入力する画面がなかったため、入力画面と関連データとの紐づけなどを追加で実装することが必要となりました。これ以外にも、漏れが多く見つかったことにより、追加要員のアサインや開発スケジュールの見直しを余儀なくされてしまいました。

これが導入前ではなく、導入途中に判明してしまったため、結果として予想外のおよそ2倍近い予算やスケジュールとなってしまい悲惨な事件となってしまったのです。

ステップ2:複雑な計算や無駄に人手のかかる業務を正しく把握し、業務改善・システム改善(自動化、二重入力の解消等)につなげる。

では化学製造業における特殊な業務プロセスとはいったい何なのでしょうか。自分たちの業務が特殊なのか否か、気付きにくいものです。

化学製造業では、原材料を独自の配合計画に基づいて混ぜあわせて製品を製造しますね。同じ製品でも液体状態のものや粒型、ロール型などが存在し、それらを社内外からの注文にあわせて製造・出荷しながら原材料や製品の在庫を管理する必要があります。その在庫の管理単位やレシピコード、IDの在り方、原料番号など、こうした他の製造業ではなかなかないものが、ERPシステムによっては対応していないことがあります。

また、IDに相当するものも複数あるパターンがありますね。 樹脂につけなければいけないものと、フィルムにしたときにつけなければいけないもの、ロールに巻いたとき何メートルかのIDと、様々な種類があるケースでは、それぞれを管理できる状況にしなければなりませんが、通常のパッケージでは対応していないケースも多いのです。

更には、現行業務がシステム化出来ておらずアナログな仕組みになっている場合、それをシステムにのせられるような論理的な業務に分解できるのか、という問題もあります。

こうした様々な業務の、どこまでをERPシステムで対応させ、どこまでを他の方法(ExcelやRPA、業務変更など)で補うのかといった、ERPシステムでどの範囲の業務まで対応するのかということを考えておく必要があるのです。それによって必要な開発の幅もかわりますね。

また、ERP製品によって出来る幅も異なりますので、選ぼうとしている製品で対応できるのかどうかを見極めるためにも、業務・システム要件の整理が大切なのです。

システム導入を行う際にはいかにこれらの「自社の業務・システムを詳しく把握しておけるか」が導入プロジェクトを成功させる重要なポイントとなります。

業務を正しく理解するには、「業務プロセス」と「ITシステム」を理解し、「可視化」する必要があります。業務要件、システム要件を明確にしておかなくてはならないということです。

このために、コンサルタントのような外部のリソースに支援を受けることもアプローチの1つとして考慮しましょう。

「業務・システム把握について専門家に詳しく聞く」

ステップ3:ERP導入ベンダー/製品の選定

それでは、本記事で紹介した実例を参考に、下記3つの観点で自社業務を確認しましょう。

  • 自社の業務・システム要件整理が十分か否か
  • 現行の特殊な業務は本当に必要か(スタンダードに寄せられないか)
  • どの業務をERPシステムに載せるのかは明確か
  • 業務要件とシステム要件が整理が出来たなら、 次はそれをERP導入ベンダーに伝えていきましょう。前述のとおり、既存の状態では貴社の業務がどこまでカバーができるのかを知らなくてはなりません。また、製品によっても実現できる範囲は当然異なるため、実際の開発にかかるコストやスケジュール感は出来る限り早めにベンダーの営業担当と確認をしておくべきです。

    この相談を最初の段階で行えるか、開発途中で突発的に出してしまうのかでは、ERP導入ベンダーから提案される金額や内容にも大きく差が出てしまうのです。当然突発で追加の依頼をされたERP導入ベンダーも通常より高いコストを出したり、急な話で十分な開発人員が用意出来ないこともあるのです。

    だからこそ上記を相談した際に前向きに検討に向き合い、そして必要に応じて提案をしてくれる営業担当やERP導入ベンダー(追加開発の可能性を嫌がらない!)を選定することが、導入プロジェクトの成功につながります。

    ただし、ここで注意です。

    ERP導入ベンダーの営業マンたちの話をすべて鵜呑みにはしないようにしましょう。

    彼らはあくまで営業のため、案件を獲得することに強い意志を有しています。そのため、大枠として間違ったことは提案はしてきませんが、「出来ます」「大丈夫です」という根拠のない、しかし我々は欲している回答を行ってくることは多々あります。

    これについては次のステップ4で解説しましょう。

    ▼おまけ:自社でERPは開発できる(フルスクラッチ開発)?

    社内の業務をシステムでつなげて効率化を図るERPシステムですが、追加開発ではなく、自社で自社の業務に適応した製品を開発する方法もあります。

    自社開発は複雑な機能を自分たちで開発・実装できるため自由度が高いものの、多くの開発人員とコスト、そして運用・保守に必要なリソースを用意する必要があります。自社にITチームを常時抱えることができる企業でない限りは大幅なコストが発生してしまうため、これに該当しない場合はシステムに詳しいITベンダー/SIerに導入要員の提供を含めて依頼することで効率よく導入ができます。

    標準化されたパッケージシステムであればメンテナンスや教育・展開に必要となるランニングコストも低くできることが多いはずです。

    国内マーケットでよく検討されるパッケージシステムの一例

    ・SAPジャパン SAP

    ・日本マイクロソフト Microsoft Dynamics

    ・GRANDIT株式会社 GRANDIT

    ・日本オラクル Oracle Fusion

    ERP導入ベンダー選定時に注意するべきこと

    ステップ4:見積りと予算

    話はかわりますが、今回のERP導入における予算は既に決まっていますでしょうか?

    もし決まっている場合、きっとそれは役員の方々から提示されたものだと思いますが、それはどうやって決まったのでしょうか。多くの場合は、以前導入した際のケースを元に算出されていることが多いですが、それは5~10年前のシステムです。

    その時と現在では業務の幅も変わっているでしょうし、システムの質も変化しています。また、きっと今までに追加開発を行ってきた部分もあるでしょう。

    ステップ3でお伝えした、ERP導入ベンダーに業務要件とシステム要件を伝えるというのは、皆さんがイメージしている業務を入れたERP導入のイメージをベンダーに持ってもらうということです。それによってベンダーは見積りという形で、実際の開発にかかるコストやスケジュール感を提示してくるのです。これがとても大切なことになります。

    大枠はともかく、その提示がないまま決めるのは難しいということを知ってほしいです。

    自分たちが想像していることがいったいどれだけのコストになるのか。それが予想を大きく超えた場合、どの部分を外していくのか、それとも必須のシステムとして必要なコストと割り切るのか、こうした議論が全くできないとは思いませんか?

    ただし、ステップ3でもお伝えした通り、ERP導入ベンダーの営業マンのいう事をすべて鵜呑みにしてしまってはいけません(すべてが嘘だ、だましているという意味ではありません)。

    見積の金額、貴社の業務要件やシステム要件に対する人員の話、業務要件・システム要件に対する製品の妥当性の話など、営業トークで隠れてしまう部分は大なり小なり発生してしまうのです。

    これを見破るためにも、複数のERP導入ベンダーに話を聞いておき、比較していく必要があります。

    また、知識や経験豊富なアドバイザーに、ある種のお目付け役のような形で助けてもらうのも大変有効です。というのも、製品選定時だけではなく、導入が始まったのちにもERP導入ベンダーの話が適性な発言か否かを判断し教えてくれる専門家というのは、プロジェクトを正しく推進していくうえで、あなたにとってとても大きい助けになるからです!

    ERP導入ベンダーの比較は、あくまで導入時でなければ複数抱えていくのは難しいケースが多いため、知見ある人に助力を請うという方法もひとつのやりかたとして知っておくと良いです。

    ▼営業マンの「出来る」を鵜呑みにして進めてしまったとある企業の失敗事例…。

    とある企業で導入した基幹システムではこんな事例もあります。

    社内で協力体制を十分に組成できておらず、IT部門(情報システム部)との連携も不十分で不安を感じていたB社さん。

    「弊社の製品はパッケージ導入だけなので、作業は基本的にすべてERP導入ベンダーで行うので、部分的な業務要件の整理はお手伝いいただきますが、全部自分たちがうまくやれるので負担もないですよ!」という営業マンの売り文句で導入を決めたのですが、蓋を開けると全くそのような形にはならなかったのです。

    テストフェーズに入った段階で全くうまく機能せず、既存システムとの連携や社内セキュリティ問題、ID認証や他システムとの連携、特殊業務の把握など、B社が作業しなければならないボリュームは相当数に跳ね上がり、急遽社内体制を再度構築、IT部門も他の業務で溢れている中、無理をいってプロジェクトに参画してもらうなど、予定とは大幅に異なる工数が発生してしまったそうです。

    しかもテスト段階で判明したものですから、不足部分を再度開発しなおして、といった悪循環に陥り、期間もコストも工数も予想以上になってしまったのです。

    ステップ5:困ったら相談しよう

    これまでのお話から、まず製品やERP導入ベンダーを探しはじめるまえに、現場担当であるみなさんに気を付けていただきたいことは大きく3つあることがわかりました。

    ①業務要件とシステム要件の整理をしましょう

    自分たちの業務について、システムでどこまで叶えていきたいのか、どんな業務があるのかを整理したうえで、ベンダーの担当者さんに理解してもらう必要があります。そうでないと、正しい見積りが出てこなかったり、導入しはじめた後に出来ないことや、追加コストがかかってしまうことが判明してしまって、大問題に発展してしまいます。

    ②ERP導入ベンダー選定時、営業マンの話を鵜呑みにしない

    お金の話、作業の話、できるできないの話など、製品選定時に選んでほしいからこそ自分たちにとって都合の良い話をたくさん出してくる人は一定います。だからこそ複数のERP導入ベンダーと比較をしたり、知見や経験豊富なアドバイザーの力を頼ったほうが良いですよ。

    ③フラットに相談できる経験豊富な人をみつける

    コンサルティング会社に頼れない時には、ERP導入ベンダーや製品の選定だけではなく、プロジェクトを良い形で進めていくためにも知見や経験の豊富なアドバイザーの力を借りることをおすすめします。特に特定の製品やERP導入ベンダーの営業さん観点ではない、フラットな目線を有する方という点がとても重要になってきます。

    本記事が、あなたの重大なERP/基幹システム刷新プロジェクトを成功に導く一助になれたならとてもうれしいです。コストも期間もとてもたくさんかかる内容だからこそ、失敗のないように進めていきたいですね。

    さいごに

    とはいえ前述した相談できる相手ってなかなか見つからないよ、いないんです、という方もいらっしゃいますよね。 そうはいってもコンサルタントや専門の方に依頼を行うにはコストも高くつきすぎてしまう…。

    そういったお悩みをもしお持ちでしたら、私たちCS Clipがお力になれるかもしれません。

    「経験豊かな専門アドバイザーへの相談」に、フラットな意見やアドバイスをもらえる場をご用意しております。

    もしまずは相談してみたい、とお考えであれば下記よりお問い合わせくださいませ。 アドバイザーだけではなく、プロジェクトを進めるうえでのお悩み相談もお待ちしております!